新しい世界へ
人はさまざまな思い込みの中で生きていますが、新しい視点を持ったとき、ようやく思い込みが抜けていくように思います。新しい視点なしに、人は変われないのではないでしょうか。
性虐待を受けて育った方々とお話する機会が多くなり、色々見えてきたことがあります。
まず、一旦は憎んでみる、というプロセスも必要で、嫌なことをされて怒るのは当然のこと。まして反省もせずに生きている加害者にあらためて怒りの感情を抱くのも、自然なことかもしれません。
家庭内の性虐待の場合は、まだ独立できない親の支配下にあり、感じた恐怖も、怒りも、憎しみも出せないまま大人になってしまう人が多いので、思い残しが溜まっています。
問題が起きたとき、親がどういう心境だったのかを知ることはできませんが、こうした悲劇はすでに親世代の負の連鎖があり、子供は単なる犠牲者です。兄弟からの虐待も同じで、親が無関係ということはありえません。
性虐待を継続的に受けた子供は、当然のことながら我慢強くなります。生存本能として、受けた傷を脳の奥深くに埋めこみ、記憶の解離を起こすことで、自分の生命を維持します。
ひどい場合は主人格を埋没させ、別人格を登場させる解離性人格障害を起こしますし、一見、正常に見えていたとしても、離人感があったり、子供時代全体の記憶が薄かったり、一生縁の切れない家族とうまくやっていくために、自分自身を欺く自己欺瞞にも年季が入り、自分の本当の感情に触れることができなくなっています。すべて生きていくため。人間の本能は凄いものです。
しかし、その欺瞞が通用しなくなってきたとき、あるいは安心できる場を与えられて心にゆとりが出てきたとき、突然、記憶が戻ってきたり、脳のロックが外れてフラッシュバックを起こしたりします。親の心ない言葉がきっかけになることも多いようです。
(性虐待を受けたことのない人にはなかなか想像がつかないと思いますが、フラッシュバックは心の弱さではなく、脳の発作のようなもので理性で抑えられるようなものではないことをぜひご理解いただきたいと思います)
見ないで済むならこのままで、と思っていても、親に幻想を抱いている限り、ショックは免れません。自分の怒り、憎しみ、悲しみ。パンドラの箱をあけて、長く抑圧してきた感情に触れることはなかなか大変な作業ですが、その価値は計り知れません。
闇に光をあてるようなもので、しっかり光をあてていけば闇は闇でなくなっていきます。そういうことだったか、と今まで見えていなかったことが、人それぞれに見えてくる。それぞれに状況もプロセスも異なりますが、ものの見え方、捉え方も変わってきます。
特に性虐待は、虐待の中でも外傷ではなく侵入という、人との境界線を破る行為であるため、自分自身の境界線がうまく作れず、その後の人間関係においても、他者の侵入を許してしまったり、自己の枠組がぼんやりしてしまうようです。私は私である、という自覚さえ持てない。そこが辛いところで、魂の殺人といわれる所以でしょう。
しかし、私は私であるという自覚さえ持てていない、と気づくことから、回復は始まっているともいえます。
回復のプロセスの中で、面白いなと思うのは、やはり違う視点が芽生えてきたときです。同じ物事でもまったく違う観点からみえるようになると、急速に楽になっていくように思います。
ここ数ヶ月、まったく更新していませんでしたが、それでもアクセス数が1日300以上になっていたり、かなりたくさんの方が読んでくださっているようです。
このブログは子供の頃に家族から継続的に性虐待を受けた方々と手を携え、共に歩むために発信しています。性虐待そのものは過去のものであっても、家族の問題は続いています。年齢ととともに親の介護や死別とも直面します。
家庭内の性虐待は家族問題です。単なる過去の記憶ではなく、その家族の中で自分はどのように生きるのか、と不可分です。
同じような体験をしている方の中には、途中で涙が出てきて読めなかったけれど、最近、ようやく最後まで読めました、という方もおられます。やはり体験について触れているものは、フラッシュバックを起こす可能性があるようです。当事者の方は十分ご注意ください。
新しい視点は、新しい世界への入り口です。苦しくなったら逆が真なり、とも言いますが、自分が見えていない視点を与えてもらうと、急に視界が開けてくる経験は誰にでもあると思います。単なる愚痴ではなく、どうしたら楽になるのか、何を求めているのか、発見し探求するのは楽しいものです。楽になることが楽しいことです。
たとえ今すぐ自分の求めるものが手に入らなくても、何を大事に生きているのか、明確になれば、もやもやはなくなります。苦しいときは、助けを求めてください(^。^) あ、そうか、という発見がありますように。
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タイムの花です♩