実父からの性的虐待

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 私が実父から受けていた性的虐待を母に打ち明けることができたのは、小学校高学年の頃です。

 わが家は当初、平屋でしたが、その頃は建て増しして二階屋になっていました。毎晩、性虐待を受けた子供部屋は、そのいちばん奥にありました。

 休日だったのか、ある日の昼間、父が足音も荒く二階に上がってきて、いきなり「なんで片づけないんだ!」と怒鳴り、私はいきなり張り倒されました。たしかに何か片づいていなかったのだろうと思います。

 父は頰を紅潮させていました。私は「ごめんなさい!  ごめんなさい!」と泣きながら謝りましたが、父は海老のように身体を曲げて倒れている私のお腹を興奮状態で、蹴り続けました。

 父の興奮は止められない。誰も助けに来てくれない。私は生存の恐怖を感じました。そのときです。

 お腹を蹴られながら、夜にされていることが急に思い出され、全身から力が抜けていき、ついに生きることに絶望しました。夜もあんなことをされ、昼も殴られ、蹴られている今の自分が悲しくなり、初めて「ああ、生きていても何もいいことがない」と思いました。

 それまでは夜の暗い記憶と、昼間、元気で遊んでいる記憶がバランスよくあって、決して生きることに萎えてはいなかったのです。

 「生きていたくない」「消えたい」と思った瞬間の記憶が、あまりにも深く、強く、脳に刻み込まれてしまったらしく、私のフラッシュバックはこのシーンでよく起こります。性虐待以上に、ショックだったのです。

 

考えてみたら、激しい肉体的虐待と性的虐待、両方の記憶がセットになると「暴力的なレイプ」になります。夜の性虐待は眠っているうちに行われ、目覚めても眠ったふりをしていたので、殴る蹴るの暴行を受けながらレイプされていたわけではありません。時系列の違う両方の体験が重なった瞬間、カチッと時限爆弾のスイッチが入ってしまったかのように、私は諦めてしまったのです。

 何もかも諦めて脱力し、ただただ蹴られている。助けてくれる人もなく、二階だったので外に逃げることもできず、長い時間が経ったように思いますが、最終的には、私の泣き声が聞こえたのか、あるいは怒って二階に上がっていった夫がいつまでも降りてこないので様子を見にきたのか、父を止めてくれたのは、母でした。

「もうやめて!」といって、私の身体を守るようにかばってくれた。その安心感が、私の「いってはいけない」と抱えていたことを言える、きっかけになりました。

 大人と違って、子供は何をどう伝えたらいいのかわかりません。それでも、泣きじゃくりながら、ようやく母に打ち明けることができました。自分でもうまく説明できず、もどかしさを感じたことを覚えています。ヘタな説明ではあっても、性的なことであることは伝わったようです。母は驚いたような顔をし、父に「なんでそんなことをするの?」と言ってくれました。

 

今思うと何かするどころではなく、そのときすでに処女膜は破られ、激しい痛みと血の付いたシーツをみて、悲しみでいっぱいになる経験もしていたのですが、どうしていいかわからずにいたのです。親が夜中に子供の部屋に来て、私が目覚めないように気をつけながらもしている何か秘密の行為であること、まして出血し、痛みを与えるような行為に及ぶのはもう尋常ではない、とわかっていましたが、小学生の子供にとって逃げる場所はなく、何をされても育ててくれる親の元にいるしかないと諦めています。

 ともあれ、私の場合は父の昼間の暴力がきっかけで、ようやく母に言うことができました。私には母を悲しませたくない、という気持ちが強くありました。これを言ったらきっと母が悲しむ、不安定になる、でも、とうとう言ってしまった。そんな感覚でした。

 長いこと私は、あの時だけは、母が助けてくれたと思っていました。しかし、インナーワークで、その時の情景を思い出せるようになり、わかってしまったことがあります。

 あの時、父はなぜ怒って二階に上がってきたのだろう、ということです。私にしてみると、それはあまりに突然でした。

 階下で、父と話していたのは、母でした。その母の話を聞いて、彼は興奮して上がってきたのだということ。私はいきなり、殴り倒されました。「片づけてない」といったのは誰なのか。父が自分で部屋をみて、片づけてないと思ったのではない、ということを思い出しました。情緒不安定な母が、父親に焚きつけた可能性が高いように思います。

 

今の時代なら、この子が片づけられない理由はなんだろう? というところから、始めるでしょうね。子供の問題行動があるとすれば、必ず理由がありますので。 いきなり癇癪を起こし、ちゃぶ台をひっくり返す星飛雄馬のようなお父さんは、いまや立派なDVと呼ばれ、治療が必要といわれる時代です。

 そういう人が少なくなってきたのだとすれば、日本人も、少し成熟してきたのかもしれませんね。

 ちなみに性虐待をする男性は異常者ですので、妻に叱られたぐらいではやめられません。せめて部屋に鍵をつけてほしかった。父は、安心して眠ることができない子供の気持ちを考えたことは、一度もないでしょう。

 

父も母も未熟であったと考えるほかないのです。

 

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ハナニラです。